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紅き姫の下剋上はーれむ。【R-18】

第3章 ひきこもり皇子。


最近になって、一気に寒さが押し寄せてきた。まだ11月の始めだというのに、今年は随分と冷え込むのが早い。晴れることは少なく、大きな部屋の中から見える景色は見ているだけでも寒々しかった。

まだ早朝。
早く目覚めてしまった私は、柔らかな羽毛が中に詰め込まれたベッドに体を沈めながら、窓の外を見ていた。そして、ベッドの隣の椅子に腰掛けて眠っているエドウィンに視線を移す。この無駄に大きな部屋にひとりっきりはまだ慣れないから、一緒にいてほしいとお願いしているのだ。椅子はやめてベッドで一緒に寝ようと言っても、椅子じゃないとだめだ、と言い張る。意外と頑固だ。

「姫様、もう起きたんですか?」

最近になって、ようやく口調が砕けてきた。まだ敬語ではあるけど、前よりは堅くなくて、話しやすいし聞き取りやすい。

「うん。エドウィンも起きてたの?」

「ええ、基本あまり寝ませんから。それに、妙に視線を感じまして」

エドウィンが少し意地の悪い笑みを浮かべる。
なんだ、気付いていたのか。

「エドウィンのその黒髪、とっても綺麗だったからつい。それに、瞳も綺麗。とても澄んだエメラルド色」

私が思ったことをそのまま伝えると、エドウィンが手で口元を覆って、軽く咳払いをする。数日間彼と生活してきたのだ。それが照れ隠しだなんてことくらいわかる。

「姫様の髪と瞳の方が断然綺麗です。燃えるように紅くて」

私は、自然と神に手を伸ばし、指を絡ませる。

「不気味がられちゃうけどね」

髪を隠さずに下町に出た時は、よく気味悪がられたものだ。近づいたから災いが……なんて、馬鹿らしすぎる。

「私は好きですよ、姫様の髪と瞳」

そう言って、エドウィンが微笑む。
自分は簡単に照れちゃうくせに、人にはさらっとこういうことを言えちゃうから不思議だ。思わず私まで照れてしまう。

実は、エドウィンには内緒で勝負していたりするのだ。照れた方が負け、という私の中だけのしょうもない遊び。今のところ、一度も勝てていない。
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