第1章 ~初夜の声は、さらすもの。~
慣れない家の、風呂場。
それでも湯船に浸かれば、緊張がほぐれる。
「ふぅ…」
長い、一日だった。
今日は私達の結婚式だったのだ。
夫となる孝一さんは、私より6つ年上。
世間知らずでまだまだ子供の私からしたら
落ち着いた、大人の男性に見える。
お見合いの席で初めて出会った時、
私はこの落ち着きに心惹かれた。
父を早くに亡くした私は、
男性に、安らぎを求めていたのかもしれない。
そんな私を
孝一さんも気に入ってくれて、
すぐに私達は結婚を前提に付き合い始めた。
田舎の女子高育ちの私は
高校を卒業して
地元の小さな建設会社の事務として
働いていたのだけれど、
…やっぱり父がいないからか、
粗野な感じの男の人や
若い男性の賑やかな感じがどうも苦手で、
だれともおつきあいをしたことがないまま
22歳をこえてしまっていて、
そんなときに
孝一さんとのお見合いをしたものだから、
孝一さんは、私の初めての彼氏、だった。