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スノーマン 【短編】

第1章 そばにいたいよ、願いを叶えるために。。。


寒い日が続く中、また僕は公園へと向かった。
それは黄色い帽子を被る優太くんに会うためだ。



「優太くん、こんにちは」

「あ、お兄ちゃん。こんにちは」


今日は少しだけ元気なようだ。


「お母さん褒めてくれた。僕は勉強も運動もできてクラスで人気者だ、って言ったら…」


そう話す顔が下を向き、暗いのは嘘だからなのだろう?


学校での話やお母さんの話をしていたら、優太くんは1箇所を見つめた。


優太くんの視線の先は病院の上から3、左から5番目の窓。


「たまにね、あの窓からお母さんが見えるんだ。前に見たときは笑ってた」


そう言って優太くんも少し微笑んでいた。




「僕はいい子でいなきゃ。淋しくても、苦しくても、痛くても笑わなきゃいけないの。

…もうすぐお母さん、いなくなるから」



スラスラと彼はその言葉を言った。
きっと何度も呪文のように繰り返したのだろう。


しかも無理して笑っている。
引きつった口、笑っていない目。冷えた笑顔。


ごめんね、僕もこんな目じゃ笑ってあげられないんだ。


お母さんに心配かけないようにこんな小さく幼気な少年が無理をしてるのだ、そう思うと痛まないはずの胸が痛かった。


「もうすぐお母さんは消えちゃうから…いい子でいなきゃっ」


繰り返して言ってた声はだんだん涙を含んだ。




ーー僕はこのまま放っておけないっ!


「じゃあ、こんなのはどうかな?全ての黒を白に塗り替えるんだ!嘘を本当のことにするんだ!」


「嘘を、本当のことに…?」



涙で濡れる顔をふっと上げてクリクリとした目をこちらに向けた。


「そうっ!僕が教えてあげる!君なら絶対やれるさっ!」


僕がそういうと嬉しそうに頷いた。


この日から僕と優太くんの秘密の特訓は始まった。




『いいかい?ここはね、………こうだよっ』

『そう、正解っ!優太くん、やるじゃん』


『一緒に遊ぼうよ、って言ってごらん?』

『そういう時はね、笑いながら大丈夫っていうんだよ』


『そうそう!前を見て思いっきり手を振るんだ』

『あっ、大丈夫?ケガしてない?…優太くん、強い子だね』




日に日に成長する優太くん、動きづらくなる僕の体。


どちらを大切にするかなんて最初から決めているから構わないさ。



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