第18章 甘夏の謌【幸村】
「何やってんだよ?」
肌と肌を寄せ合い、2人で暫し快楽の余韻に浸っていたが
モソモソ動き出そうとし始めた美蘭。
「着物を…着るの!」
「は?まだこのまんまでいいだろ?」
「ヤダよ!恥ずかしいもん…」
正直、500年後の世界ではそれなりの経験がある美蘭だが、
幸村とは、普段ケンカのような言い合いばかりしているせいか、甘い雰囲気になると激しく緊張をしてしまうのであった。
「なに今更馬鹿馬鹿しいこと言ってんだよ。」
そんな美蘭の内心などわからない幸村は、
乱暴な言葉とは裏腹の優しい所作で、美蘭の裸の腰に腕を回し、後ろから抱き締めるように引き寄せた。
「…!馬鹿?!」
言い返しながらも、
本当は、嬉しくて、ドキドして、胸が破裂しそうな美蘭。
「ああ。とんでもねー馬鹿。」
「なっ!?」
振り向いて反抗しようとする美蘭の動きを、ギュッと後ろから抱き締めて封じた幸村が、
絞り出すように、言った。
「久しぶりだってのに…離せるかよ。」
「…!!!」
自分を離したくないと言ってくれた恋人の言葉に、ドクン!と心臓を震わせていると
「今日なんもやることねーし。このままでいいだろ。」
背中から、髪に、こめかみに、耳に、頬に、
優しくて、甘い、口付けの雨が降り始め
「…ん、…っでも…朝…だよ?」
美蘭の身体は、簡単に、また火照り出した。
「俺は昨日夜なのに寝かせてもらえなかったんだぜ?」
「…っぷ!…わかったよ。付き合う。」
大好きな幸村に求められたら、拒否などできない。
悔しいから言葉にはしないが、それが本音である。
「珍しく素直だな?」
「いつも素直じゃなくて、可愛いくなくてすみませんね!」
「んなこと言ってねーだろ!」
「言ったのと同じでしょ?!」
「同じじゃねー。おまえは生意気行ってる時も、イノシシみてーに暴走してる時も……っ…可愛いんだからよ…っ。」
「…は?!イノシシ?!…って…なに…よ…っ!」
2人して真っ赤な顔。
「あー!ったく!」
「…何…っ…んう…っチュ…ん…ふ…っ」
甘い雰囲気が苦手な2人の、
甘い甘い時間は
今、始まったばかり。
終