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【イケメン戦国】恋花謳〜コイハナウタ〜

第16章 恋知りの謌【謙信】湯治編〜 恋心 〜③


「キキ…ッ…。」

暫くして、

美蘭が縫い物に集中していると聞こえてきた可愛らしい小さな声。


それは

「ウリ…?お前…籠から抜け出したのか?!」

秀吉の連れてきた、ウリであった。

甘えん坊のウリはすぐに人にまとわりつくから、おそらく邪魔にならぬよう籠に入れておいたのであろう。

しかし、すぐ近くで聞こえる飼い主の声に抜け出して来てしまったらしいウリに、困りながらも目尻を下げている秀吉を、美蘭は微笑ましく思った。


「ウーリ♡久しぶりだね?」

まだ打ち合わせの最中の秀吉が困らぬようにと美蘭が声をかけると、

美蘭を遊び友達だと思っているらしいウリは、ピクリと反応して、首を振り声の主の居場所を探した。


「こっちだよ♡」

「…♡!キキッ…♡♡♡」

更に声をかけると、ようやく美蘭の存在に気づいたウリ。


すると嬉しくてはしゃぎ出したウリは、逆に興奮してしまい、部屋中を駆け回り始めた。

「キキキキッ♡」

「こ…こら…っ!」
「うわ…っ!」
「おい…っ…!」


「あ!…騒がせちゃってすみません!わたし、他の部屋に連れて行きます!」

自分がかけた声が更にウリを興奮させてしまったと、申し訳なく思った美蘭がそう言って立ち上がると、

信長の眺めていた書簡の上で大きく飛び上がったウリが、美蘭の胸元に、飛び込んだ。


「……。」

「申し訳ございません!美蘭、ウリを頼めるか?隣の部屋が空いているから…っ。」

不躾な猿の行いに、まったりとした表情の信長に丁寧に詫びた秀吉は、慌てて美蘭にウリの世話を頼んだ。



「はい。任せて下さい。…一緒に遊んでようね、ウリ♡」

美蘭は慌てる秀吉に笑顔で答えて、腕の中のウリに頬ずりすると、ウリも嬉しそうにキキッ♡と、鳴いて応えた。



「信長様、ウリの失礼、大目に見てあげてくださいね?」

去り際、ふわりと笑顔で残した一言に、

「猿ごときに…腹を立てる訳があるまい。」

思わず懐柔された信長。


全てを包み込むような、何処か妖艶な笑顔に魅了されたのは信長だけではなかった。


「越後の龍もあれで操っている訳か。」
「たいした女になったものだな。」


美蘭当人は、そんな会話など知る由もなかった。

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