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【イケメン戦国】恋花謳〜コイハナウタ〜

第12章 恋知りの謌【謙信】湯治編 〜おしおき〜


「なんだった訳。あの茶番!」

家康は不機嫌だった。



「…ククッ。不機嫌な奴が増えたな。」

家康を笑って眺めながら、光秀が言った。



「不機嫌にもなるだろう。宥め賺(なだめすか)しているだけで…美蘭を泣かせるような振る舞いがあったことに変わりはないんだ。上杉など信用ならん。」

秀吉は、変わらず不機嫌であった。



「不愉快だが…もう少し見極めが必要なのは確かだな。」

信長の言葉に、

「面白そうだな。納得できない振る舞いが続くようなら…美蘭を掻っ攫って安土に帰ってやろうぜ。」

政宗は、瞳をギラギラさせて、口端を上げた。





謙信が、三成に事の経緯と美蘭の体調の説明を受け、帰りの馬の手配をして貰っている間に、美蘭は、武将たちに手伝われて帰り支度を整えていた。


「あ…!謙信様!」

笑顔の美蘭は、見た事のない上質な着物を着せられて、織田の武将たちに囲まれていた。


「ほら、お前の好きな俺のみたらし団子だ。持っていけ。」
「政宗のお団子大好き♡ありがとう!」

「もう風呂の底に沈むなよ?」
「大丈夫です!光秀さんこそ気をつけてくださいよ!」

「念のため明日も温泉入るの止めときなよ。この薬も飲んで。」
「家康、いろいろありがとう。薬、飲むね。」

「帰ってから無理するなよ?お前はすぐ無理をするんだからな。」
「秀吉さんは、相変わらず心配性だね。でもありがとう。気をつけるね。」


その光景を見た謙信の胸の中には、黒い感情が湧き上がった。


安土は美蘭にとって故郷のようなもの。

織田の武将たちは、いわば美蘭の家族。



…わかってはいるのであるが。



自分にとっては、敵軍の武将たち。

今存在しているのは、永世中立の地だからこその平穏である。

織田とまた戦を始めることがあれば美蘭が悲しむことは必至。


…そうした複雑な思いも抱きつつ、



どんな理屈を抜きにしても、武将たちの美蘭への執着に苛々を感じずにはいられなかった。


通常女の世話など女中などにやらせるのが常であるが、織田の面々は下っ端の三成に自分の相手をさせ、信長を筆頭に、武将たちは美蘭の周りから離れないのである。

(……尋常ではない。)

謙信はため息をついた。

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