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【イケメン戦国】恋花謳〜コイハナウタ〜

第11章 恋知りの謌【謙信】湯治編〜露天風呂 後編〜


「そうです…不安になりました。…謙信様が…好きだからです。またあの時のように離れて行ってしまわれたら…って…考えただけで怖くて…っ。

彼女と一緒の謙信様を見るだけで不安だったのに…一緒に温泉を出て行かれたのを見たら…本当に怖くなって…」

横たわる褥に、涙が流れ落ちる。




(…!まさか温泉で…あの場に居合わせていたのか?)

そう思いながら、




かつて自分が、

伊勢姫の死の呪縛に囚われていたように、

美蘭は、

自分が与えてしまった不安に囚われていることを知り、

謙信は、胸が張り裂けそうになった。







「…つまらん話だ。」



「…え?」



「もっと上杉の悪口が聞ければ面白くなるものを。貴様が上杉を好きだと言う話など、これ以上聞いてもつまらんだけだ。」

「…っ!」

信長は、厳しい言葉とは裏腹に、優しい柔らかな瞳で見つめながら、美蘭の涙を拭ってやる。




「上杉。貴様にこの涙を収めてやれる術はあるのか。」

「「「 …?! 」」」




信長の怒りを含んだ低音がその場に響き渡ると、

「…当たり前だ。」

…という言葉とともにシュッ…と廊下側の襖が開かれた。





「…っ!謙信様…っ?!…っつ…!」



突然現れた愛しい謙信の姿に、美蘭は反射的に身体を起こそうとしたが、またも頭痛が、それを妨げた。



「…大丈夫か。」

美蘭の褥の脇、信長の反対側に膝をつくと、謙信は、信長に涙を拭われている美蘭の髪を、優しく撫でた。



美蘭の視線が謙信に向けられると、信長は、美蘭からそっと手を離した。



「…愚問か。大丈夫である訳がないな。…すまぬ。お前にそのように不安な想いをさせていたとは…。」

謙信の色違いの瞳が、申し訳無さそうに揺れた。

「椿は赤子の頃からお守りをさせられてきた、下の世話もしたことのある間柄。急に持ち上った見合い話に不安定になって俺を頼ってきただけだ。誤解させたようだが…吹田殿の元に送り届け、事情を話してやって来ただけだ。」

その視線は、

心許なかった。

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