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【イケメン戦国】恋花謳〜コイハナウタ〜

第11章 恋知りの謌【謙信】湯治編〜露天風呂 後編〜


安土の武将たちが露天風呂に入っていくと


…ポチャン。


1番大きな温泉の奥にある大きな岩陰から、わずかだが人の気配とともに水面が揺れる音が聞こえた。



「何奴!」

反射的に構える秀吉。

「秀吉、ここは共同の露天風呂だ。その発言の方が無礼だろ。」

政宗の言葉に、ハッとした秀吉は、失礼を詫びようと岩陰を目指し湯の中を進んだ。

「岩陰に居られるお方、失礼した。」



岩陰を覗き込んだ秀吉の気配が、揺れた。

「…?!どうなされた?!女が湯の中に倒れているぞ!」




一瞬で、空気が緊迫した。




秀吉が駆け寄り、水に沈んでいた女を抱き上げると、

ザバ!と激しい水音が聞こえた。


「……美蘭!!!」



「「「「「 …?! 」」」」」

余裕のない声の秀吉の口から美蘭の名前を聞いた武将たちは、すぐに異変を感じ取り、ザバザバと複数の水音を響かせながら、湯の中を岩陰に駆け寄った。


「美蘭!!」
「いったい…何が…!」

そして、

気を失い、ぐったりと秀吉に抱き抱えられている美蘭の姿に、顔面蒼白した。


「その血の気からすると、まだそんなに長く水に浸かってた訳じゃない筈!早く!」

家康の冷静な声にハッとした秀吉は、抱き上げて湯から上がった。



美蘭を床に降ろすと、

武将たちの手拭いを纏め持っていた三成が、機転を利かせて、美蘭の身体に手拭いを広げて掛けた。


「政宗さん、美蘭の頭を押さえて!秀吉さん、口から息を送って!」

「あ?…ああ…。」
「わか…った!」

政宗が美蘭の顔を押さえて固定すると、

秀吉が口から息を吹き込んで行く。


「こっちからも押してやると早めに空気が通るんだよね…ッ…」

家康は、心の臓のあたりを、両手で、一定の速さで押してやる。



まだこの時代に、人口蘇生などという知識は無かったが、家康の知識とこれまでの経験が、これが早く水没した人間を復活させるやり方であると知っていたのだ。




「…そのまま死んだら許さんぞ。」

信長の呟いた言葉に、武将たちは無言で同意しながら、


ひたすら救護を続け、


ひたすら見守った。


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