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【イケメン戦国】恋花謳〜コイハナウタ〜

第11章 恋知りの謌【謙信】湯治編〜露天風呂 後編〜


「お前…。自分が何を言っているのか、わかっているのか。」

微動だにしない謙信が、このような状況であるのに関わらず、取り乱しもせずに言った。

「…当たり前だ!」

強がりながらも震えている椿の声には、心許なさが滲んでいた。



(いくら謙信様でもこんなふうに可愛い女の子に迫られたら…)

美蘭は、謙信が、目の前の誘惑に惑わされてしまうのではないか…と

心配と不安で息ができなくなりそうなほど苦しくなった。




「これはこれは…お取り込み中みたいだな。」

いつの間にか寝湯から戻ってきた3人が、立ち尽くし向かい合っている謙信と椿の横にやって来た。

「…っ!人がいたのか…っ?!」

それに気づき一気に顔を真っ赤にした椿は、自分を抱きしめるようにして裸を必死に隠すようにすると、

踵を返して、入り口の戸から飛び出して行った。

「…椿!」

静かに呼びかけた謙信の声は届いたはずだが、椿は振り返りもしかった。

「…お前たち、先に離れに戻っていろ。帰りは少し遅くなるやも知れん。美蘭と夕餉をとっていてくれ。」

溜め息をつきつつ3人にそう言うと、

謙信は、頼んだぞ…と、椿を追うように入り口の戸から出て言ってしまった。




…バン!と

戸が閉まった無機質な音が、鳴り響いた。



「…はあ?!」

幸村は、素直な気持ちを叫んだ。


「今のは…追いかけてはならん気がするのは俺だけか?」

「…いえ、多分みんなそう思うと思います。」

「………だよなぁ?」




(…うそ…っ…)

美蘭は、もうワケがわからなくなって

全身の血が失われてしまうような絶望に身体中を支配された。

(…追いかけて行っちゃった…っ…!)




はっきり拒絶して欲しかった。


美蘭がいるから、と言って欲しかった。


追いかけないで欲しかった。





だが謙信は、椿の後を追いかけたのだ。




「しかし毛が生え揃わぬほど幼いくせに胸はしっかり育っていたな。近頃の発育はけしからん。」

「まったくです。」

「おまえらがけしからんわ!」



まさか自分がここにいるとは思ってもいない3人の雑談など、まったく頭に入ってこない美蘭は、


震える自分の身体を強く抱き締めた。



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