第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
『な、なんだよ?』
『とりあえず、アリバイ、作ろ。』
『アリバイ?』
『そう。だって俺、まっつんの彼女に
今日のまっつんの行動を報告しなくちゃ
いけないんだよ?
まさか、もう一人の女のところに行ってた、
なんて、ホントのこと言えないじゃん!』
『…お前、そういうウソ、得意じゃねーの?
なんか、それっぽく言っといてくれれば…』
『ダーメ!
そういう心のない手抜きは、すぐ、バレる。
女性の勘は、鋭いんだから~。
こんな時に細かな気遣いが出来ないと、
あっという間に女性を敵にまわすよっ!』
『なんだよ、それ、めんどくさい…
やっぱ俺、どっちもとか無理だ。』
『早っ!諦めんの、早っ!
そんな生ぬるい気持ちじゃ、
誰も幸せにできないよっ。
ここはスパイを引き受けた俺のためにも
無責任は許さないからねっ。
えぇと…そうだ、こっち来て。』
『痛ぇっ、なんだよ、待てよ…』
駅前の通り。
看板が光るビルが並んでる。
『ここに入ってく感じで歩きな。
俺が、隠し撮り風に撮るから。』
…塾。
『なんで?!』
『受験前なのに成績が芳しくないから
こっそり、集中セミナー受けてることに
しといてあげるよ。』
『なんでこっそりって設定なんだよ?
別に悪いことじゃないんじゃね?』
『だって、
受験前なのに成績芳しくないって、
なんか、ダサいじゃん!
計画性ないっていうか、
たるんでる、っていうか。
だから、こっそり塾通い…ってことで。』
『…なんか、及川に言われると
必要以上にバカにされた感がするのは
なんでだろーな?』
『ふふーん、
それは多分、俺は既に進路が決まってて
余裕があるからかなっ!
春からは都会できらめく恋とバレー三昧!
サクセスストーリーへ、まっしぐら~!
…痛っ!なんだよ、協力してやんのに…』
『つまんねぇ自慢話は聞き飽きた!
それよりさっさと写メれって。
入り口でウロウロこんなことしてんの、
怪しすぎて捕まりそうだ…』
及川の演技指導?を受けながら
塾に入る感じの隠し撮り風の写メを数枚。
『…ん、これならいいんじゃないかな。
じゃ、まっつん、明日、俺がこれを
まっつんの彼女に見せて報告しとくから。
うまく話、あわせてよ!』
『あぁ、さんきゅ。』
『じゃ、俺、帰るからね。』
『俺も。』
『えぇっ、何、言ってんの!』
