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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)




『…私の誕生日がきてね。
その日の朝、夫が言ったの。』

『おめでとう、って?
今夜、どっか飯でも行くか?って?』

『そうだったらよかったのに。』

『何て?』

『クリーニングに出してるコート、
今日のうちに取ってきとけよ、って。』

『…それから?』

『それだけ。私の誕生日、忘れてたみたい。』

"旦那、ひどいヤツだね"って、
綾ちゃんに同情するのは簡単だ。
だけど、それじゃ、
誕生日を忘れられてたことを、
俺まで簡単に認めてしまったみたいに
聞こえるんじゃないだろうか?

だから、わざと、わからないフリをする。

『忙しかったとか?』

答える綾ちゃんの顔は、
あっさりしてた。
もう、感情を踏み潰し慣れたみたいに。

『興味がなかったんじゃない?
…なんかね、その日が境目だったかも。
期待するからいけないんだ、って。』

淡々と。
今、綾ちゃんが見ているのは、
目の前の景色ではなく、
諦めてしまった時の、自分の姿。

『その頃から、1日、
ほとんど誰とも話さない日も増えて…
自分が枯れてくのがわかるの。』

『…綾ちゃん、全然、枯れてなんかないよ?』

アハハ、と笑う綾ちゃん。

『あのとき、枯れてたのよ。
特に、心なんか、もうカッサカサ。』


…あぁ、酔ってきてるなぁ。
これ以上、飲ませない方がいい。

それはわかるのに、
どうしていいかわからない。


『…いっちゃん、帰ろうか。』

『…え?』

『ごめんねぇ、あたし、
調子のって話しすぎた。
子どもの前でする話じゃないね。』

『…また、そうやって逃げるんだ?』

『逃げじゃないもん。
いっちゃんが聞き上手だから、
ついつい、つまらない愚痴、
ペラペラ話しちゃった。私が悪い。』

『ほら、そうやってすぐ、
自分が悪いことにして、
無理やり終わりにしようとする。』

『だって私が悪いでしょ。大人が夜中に
未成年つかまえて、酔っぱらって。』

『大人とか未成年とか、関係ないだろ?』

『ある。』

『…俺が大人だったら?
そしたら全部、話してくれるわけ?』

『…うーん…大人だったとしても、
男の人にはわからない気持ちかもね。』

『わかるよ。』

『わからない。』

『わかるって。…綾ちゃん、』


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