• テキストサイズ

~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)




じっと俺を見つめる綾ちゃん。


『…ここで、何してるの?』


そんなこと言われても、

会いたくて、とか
探したんだ、とか

言っていいのかわからなくて。

『たまたま、偶然、通りかかったとこ…』

プッ、と、笑い声が聞こえる。

『たまたま偶然じゃ、
なかなか通りかからないよね、
だってここ、4階だもん。』

『…だな。』

『いっちゃん、嘘つくの、ヘタすぎ(笑)』

『…綾ちゃんは、何で、ここに?』

『あたし?あたしは、』

綾ちゃんは、
コツコツ、と音をたてて歩いてきて、
"OPEN"のプレートに手を伸ばした。

『店じまいの時間だから。』

プレートを外すと、
そのままくるりと振り返り、
ドアを開けて中へ消えていく。

そーいうこと、聞いたつもりじゃないんだけど。

…薄暗い廊下に、一人残される、俺。
途端に、たまらなく不安になる。

ほら、
またそうやって、
急にいなくなる。

せっかく会えたのに、
急に1人になるのは、もうイヤだ。

追いかけたいのに
拒絶されるのが怖くて
身動きできないでいると、

カチャ。
ドアが開いて、
綾ちゃんがこっちを覗く。

『入る?』

その一言で、
今度は途端に安心して嬉しくて、

うん、と
声に出さずに頷いて
綾ちゃんの後に続いた。


夜の街。
たくさんのネオンと
たくさんの人の中、

その中のたった1つの小さな店で
やっと見つけた1人が目の前にいる、
久しぶりの、夜。

話したいことがたくさん。
聞きたいこともたくさん。

だけど、
自分で思っていたよりずっと、
…なんというか、陳腐な言葉だけど…

胸がいっぱいで。

もう会えないかも、と思っていた。
ロクな情報もないまま探すなんて
どう考えたってバカみたいなのに、
でも探さずにはいられなくて、

そんな中、会えたことが
なんか、
偶然じゃないみたいに嬉しくて、
何から話していいかわからなくて、
どうしていいかわからなくて、

とにかく黙って、ついていく。

『ここ、座って。』

5脚の椅子が並んだカウンターの
1席を示されたから、
素直に従って腰かける。

綾ちゃんは、カウンターの中へ。
そこに立つ綾ちゃんは、
うちにいた時の顔とは少し違う、
"働く女の人"の、顔。

/ 733ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp