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守れなかった王様へ

第1章 守れなかった王様へ


別に守りきれなかったのは自分のせいだとは思ったことはない。あのバカが一人で突っ走って一人で自爆しただけだ。そもそも守るとか考えてなかったし。
でも、一人で突っ走らせるつもりなんてなかった。
あいつが一人だなんて気づきもしなかった。俺は常に隣にいたから。くまくんだってあいつの近くでぼんやり寝てたし。物理的に近くにいるから心まで近くにいる訳じゃないのにね。
あの頃の俺は今よりも、付き合わされてるって思ってるところがあって、振り回されるけど過干渉じゃないところが心地よかったんだと思う。くまくんだってきっとそうだ。
でもあいつは違った。
俺たちは王様の近くに侍ってる騎士であいつは王様。
あいつにまつわるあれこれに振り回されつつしっかりあいつを守らなきゃなんなかった。
皇帝にも五奇人にも負けない国がほしかったんだ。
暴力的なまでの力がほしかったんだ。
あいつはそれで、作り上げた国を、居場所を守りたかったんだ。
結果的には負けた。俺たちはそこからでももう一度作り上げようと、まだ出来るって思った。でも、あいつは粉々に砕けちって作り上げるなんて不可能だった。
それでも、守るべき王様が必要だった俺たちは砕け散った王様だった欠片を無理矢理くっつけて、はめて、組み立てて、どうにか形を保った。あいつの心は最後まで見つからなかった。でもいつかきっと心は戻ってくる。そう信じて疑わなかった。
そして、ある日あいつは戻ってきた。
宇宙だインスピレーションだなんて言ってるあいつを見て、俺たちどう思ったと思う?

ああ、あいつはまだ地獄にいるんだ。皇帝に殺された時のまま、心は殺されてあそこに転がってるんだ。

絶望もなにもなかった。ただそこには空洞があるだけ。なるくんもかさくんもほぼ初対面だったからなにも感じなかったみたいだけど、俺とくまくんはわかった。わかってしまった。王様は変わってしまった。あれは王様のまがい物で形だけ取り繕った俺たちの鏡だ。本物はどこにもいなかった。

ああ、悲劇だなんて言わないけど、ハッピーエンドには遠く及ばない終わりだったんだ。俺たちの終わりはまだ先にあるけど、王様は一度終わったんだ。終わったものを無理矢理生かしてるんだ。それは間違いなく俺たちのせいだった。

ごめんね、王様。俺たちが守るべきだったのは、あんたが作った国でも居場所でもなくて、あんたの心だったみたいだ。
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