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君のために生まれて君のために殺される

第1章 君のために生まれて君のために殺される



お母さん、お父さん、お姉ちゃん。私みんなに愛されて生まれたんだよね?
そうよ、そうさ、そうだよ
聞けば当然のように返ってくる肯定に心が満たされる。

私がいる部屋には、何でもあった。ふかふかのベッドにカラフルな積み木にきれいなお洋服。
窓もあるがごつい鉄格子がはめられていて景色を楽しむようなものではなく、採光のためにあるだけだ。
私はそんなことどうでもいいのだ。愛してくれる家族がいる。食事をとって、お話をしてくれて、一緒にいてくれる。
私はそんな小さな幸せでよかった。満足してたのに。


オソトからたくさん人が来た。初めて見るヒトたちだった。
彼らは、私たちが本当の家族だとのたまった。何を言っているのかわからなかった。
警察と名乗る人たちも来た。私の家族が警察の人たちにひどいことをされていた。
ああやめて。私の家族にひどいことしないで!

あの日から一週間がたった。
警察の人がいろいろなことを言ってきた。
君は誘拐されていたんだ、あの宗教団体の神様とされていたんだ、足が動かないのもあの宗教団体で纏足されていたせいだろう、
五年間も大変だっただろう、これからは本当の家族と暮らせるからね、安心してくれ、だなんて。

私はあの人たちと小さな幸せだけを貪って暮らしていきたかったのに。
私が神様だってかまわない。構うものか、私が神様なら家族だって神様だ。実際私にとって神様と等しい存在だった。
お母さんは私においしいものたくさん作ってくれた。体が自由に動かなかったから食べさせてくれた。
私が食べるのが下手で口からこぼしてもお母さんは嫌な顔一つせずにハンカチで拭ってあーんをしくれるのだ。
お父さんは私が動けないからっていっつも抱っこしてくれてた。あれがしたいこれがしたいとわがままを言う私に笑って何でもやらせてくれた。
たまに歩けなくなった足に目を向けて優しくさすってくれるあの大きな温かい掌が大好きだった。
お姉ちゃんはいろんなお話をしてくれた。お姉ちゃんは中学生というやつで学校での話をしてくれた。
セーラー服のお姉ちゃんはすっごくきれいで着てみたいとねだった私に笑って着せてくれたことは大切な思い出だ。

警察の人がまた来た。主犯の三人は明日の夜明けごろ死刑が執行されますといった。
私はただ一言、そうですか、と言った。
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