第13章 わっちの心は雨〜家康〜
男の名前は、徳川家康。
なぜ、こんな京都にいるのかは、分からなかった。
「紅音が、なんでこんなところにいるんだ!」
徳川家康……いや、竹千代様はわっちが昔、今川に仕えていた時、一緒に遊んだ人質の子供であった。
「竹千代様……おひさしゅうございます。」
「なぜ此処にいるかを聞いてるんだ!」
竹千代様……そこまで必死にならんくてもええのに。
「今川家が滅ぼされた後、わっちは売られたんです。」
昔、恋仲であった男に。
竹千代様は、目を見開いた。
「竹千代様、此処は寒いでございますので、店の中にどうぞ。」
わっちは、竹千代様を誘う。