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東京恋物語

第1章 プロローグ


1954年(昭和29年)只今、高度経済成長真っ只中。日本民主党の第1次鳩山一郎内閣の時である。
東京の大都会で鞄を手に上京した洋子はとある小さな映画会社に勤務することが決まっていた。本当は中学まで勉学に励みそこから就職して欲しいとの両親の頼みもあったが少し無理を言って女学校に入らせてもらいまた勉学に励んだ。そして18歳の時にこの会社に入ったのである。
「朝日映画株式会社・・・聞いたことのない会社名だわね。」
それからこの会社で一生懸命に働くことになる。そこから彼女の人生は大きく変わった。
「ああ、君かあ。新しく入社したのは?」
「はい、よろしくお願いします。」
会社の社長である川畑晃(あきら)が笑顔で出迎えてくれた。
会社に入りすぐに目が飛びついたのは彼女と同じ位の背丈の女性が椅子に腰かけていたからである。
「私もさっき入社したばかりなの。橋本綾乃と言います。よろしくお願いします。」
椅子に座っていた綾乃は立ち上がり洋子に軽く会釈する。
「日下部洋子です。こちらこそよろしくお願いします。」
それがのちの同僚となる綾乃との出会いであった。そして洋子と綾乃は握手を交わし笑顔が溢れた。
「さて、仕事を始めようか。」
2人は社長から説明を受けながらそれぞれの仕事に取り掛かっていった。
この日の仕事が終わると洋子は会社を出て寄り道をしようと手芸屋さんに寄った。
第二次世界大戦において、アメリカ・イギリス・中華民国の連合国に敗北し、朝鮮半島や満州などの植民地を喪失した上に、敗北による経済活動の荒廃や混乱を経た上でも、日本は焼け野原の中から復興したのである。そして今著しい発展がめざましく日本は進化を遂げようとしていた。
「久しぶりに手芸でもやってみようかな。」
「いらっしゃいませ。」
店のドアを開けると店員が明るく挨拶をしてくれた。
手芸屋では様々な色の糸や布、裁縫セットが売られていた。
「これください。」
洋子は赤の糸を手に取りレジに並んだ。
「運命の赤い糸か・・・。」
赤い糸を見ると女学生になりたての頃を思い出す。洋子には当時好きだった人がいて勇気を出して告白をしてみたが振られてしまったという苦い過去があるからだ。


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