第1章 Linaria~この恋に、気づいて~
今はこの気持ちが本当にアンタに向いているか解らねぇ‥‥。
だけど、確実にアンタに堕ちる時が来る。
気付いたらアンタを追っている俺がいる。
アンタのその柔らかそうな髪が、唇が、俺を誘う。
あぁ?気のせい、だって?
解ってねぇな。
良いか、野郎は皆欲望の塊だ。
少しでも油断していると…
ごちそーさん。ってそう怒るな…今言ったばかりじゃねぇか。
アンタの唇は、
甘いな…。
【Linaria…2】
アレからどのくらい経ったのか解らねぇ。
何回この場所に来たかも解らねぇくらい通い続けた。
その度に追い返され、長い溜息と共に俺は何時もの場所へと帰る。
こんな面倒くせぇ事を何故俺がやらなきゃならねぇんだとずっと思ってた。
だけど俺の第六感が、うるせぇくらいにざわつきやがる。何れコレによって俺の運命が大きく変わる、深く関わって来ると伝えて来る…。
律儀に今日も同じ場所、同じ時間に俺はやって来た。
目的の敷地内に入ると何時も追い返された人物と出会す。
「あぁ、丁度良かった」
今ご連絡を差し上げる所でしたよ、土方さん。
俺は咥えていた煙草を近くの灰皿へと投げ入れ、その人物の後を追った。
長い廊下を二人で歩く。
何時も歩いていた廊下だが、今日はやけに長く感じる。
「本当に、つい先程なんですよ」
ですので手短にお願いしますと、俺の前を行く人物は言う。
んなこたァ解ってる。
一応は良識人だ。そこまで非道じゃねぇ。と言いながら何時もの癖で煙草を取り出し一本咥えてしまう。そんな姿に白い目で見られ一つ舌打ちをし、それを握り潰した。
エレベーターを乗り継ぎ、俺らは目的地の前に着いた。扉の外から入っても良いかと声を掛けると中から嗄れた声がした。
何て言っているか解らなかったがどうやら良いらしい。それを確認すると扉をゆっくりと開け、俺らは中へと入った。
「気分はどうかね」
俺らが入って来た為に、部屋が外気で冷やされる。
横たわるソイツが早く閉めろと言わんばかりに顔が歪むのが解った。
扉を閉め、俺とソイツを遮るカーテンが落ち着いた時だ。
俺はソイツと目が合った。
その瞬間、ソイツの目がこれでもかと言うくらい見開き、俺以上に瞳孔が開いた。
「…っ!」
「…あぁ?」
俺は何もしちゃあ、いねぇ…多分。