第2章 Linaria~幻想~
【Linaria…14】
あぁ、
吸い込まれて行く…。
何もかも見据えたこのイロに、
私は魅せられて、そして堕ちて行くんだ…。
だけど、
そのイロに映るのは…
「…っ!?」
何が起きたというの?
私は屯所へ向かおうとし、一歩前に踏み出した途端だ。私の腕は誰かに掴まれ、持っていた荷物はバサバサと音を立て地面に転がってしまった。
まぁ、荷物は仕方ないとして、一体私はどうなってるのだろうか。
何故私は誰かに抱きしめられているのだろうか。
「っ、はっ離しっ…!」
離して下さい。
そう言おうとしたのだけれど、私の言葉に被せる様に、その人は言ったんだ。
「やっとっ…!」
その声は今にも泣き出してしまいそうな、そんな声だった。
私、この声知っている…。
さっきもこの人の事を考えていたばかり。
「やっと…」
抱きしめられた腕は解かれ、私の意思とは間逆に対面する様に向きを変えられると自然と視線が交わる。
「やっと、見付けた…」
…っ!
「…っ!?」
視線が解けない…。
ねぇ、何故貴方が私の名前を知っているの?
ねぇ、私は貴方とは今初めて会ったんだよね?
ねぇ、見付けたって何?
ねぇ…、貴方は誰を見ているの…?