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名の無い関係

第2章 ココロの休息


心の静養も必要だろうとエルヴィンは言っていたが、全くもって心が休まる暇などなかった。
新しい上官アゲハは他の連中とは明らかに違った。
無駄に緩い、そしてかなりだらし無い。
彼女の率いる第三分隊に所属する兵の主な仕事はダメな上官をサポートすることが主だった。


「いい加減にしろよ!お前には学習能力がないのか?」

『何その言い方!こんなに書類ばっかり持ってくる方が悪いのよ!』

「お前が溜め込むからだ!」


執務机に積み重ねられた書類の山の。
他の隊の連中は訓練に勤しんでいると言うのに、隊長であるはずのコイツがまだまだ外には出られそうになく、それに伴い各班の班長達が指揮をとって訓練をしている。
毎日やるべき事をきちんとこなせばこんなに切羽詰まる事などないはずなのに、書類仕事が嫌いだと彼女はいつもギリギリまでそれに手を付けない。
まだ彼女の隊に所属になっただけで、どの班に所属するか決まっていないリヴァイは必然的にこうして彼女のおもり役となっていた。


『あーダメだわ、もう頭がパーンってなる。ちょっと外の空気を吸わせてよ。』


何枚目かの書類にサインを書き込んだだけでこの始末。


「好きなだけ吸わせてやるよ、だが!これを終わらせたらだ!!」


リヴァイの鬼ー!悪魔ー!!と半べそをかいてまた渋々ペンを彼女は握った。
これが本当に自分の上官なのか?と毎日自問自答してしまう。
「いい子」と言ったときにエルヴィンが笑ったのはこういうことだったのだろう。
立体起動の訓練や陣形確認、直接戦闘訓練になると確かに分隊長だと思う実力者ではある。
だが、こうしている今の姿は勉強を嫌がる子供だ。
他の連中はこんな彼女に慣れていたらしく、「後でこっそり自分達がやればいい」なんて甘やかす様な事を言っていた。
アゲハ隊長には自由にしていて貰いたい、と。
こんなに無能で緩くてだらし無い上官に何故か部下達からの信頼は厚い。


『…そうだ、リヴァイがウチにきてもうすぐ一ヶ月だね。』

「それがどうした?」

『これ終わったらさ、みんなでごはん行こうか。君の歓迎会してないじゃない。』


彼女はそう言うとニッコリ笑う。


「…終われば、な。」


きっとこのままちゃんと執務をこなしたとしても、積み重ねられた書類が無くなるのは明日の朝近くになるだろう。
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