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名の無い関係

第8章 新体制


まるで昔の自分と彼女を見ているみたいだ、とエルヴィンは呟いた。
キース団長の執務室で今後の兵団内の編成を話し合っていたが、外から聞こえた賑やかな声に話し合いが中断してしまった。
また彼女か、とキースは苦い顔をする。
実力は申し分無いが、何かと彼を困らせる問題兵なのは入団当初から変わらない。


「もう五年ですね。彼女も立派な調査兵団の一員です。」

「まだまだ手の掛かるジャジャ馬だろ。」


ハンジもそうだが、ここには手の掛かるジャジャ馬ばかりだとキースは零した。
怪我を負った者達の復帰が済むまでは、壁外調査に出る事よりも、戦闘訓練や通常の任務を優先する編成を行う事になった。
まだ経験の浅い兵達に兵歴の長い者が指導者としてつく、訓練中心の隊。
過去の調査報告や研究を元に今後の課題や新たな武器の開発などを行い、それを実際に使用できる物に完成させる隊、そして通常任務をこなす隊の三つに分けるのが妥当だろうというのが結論。
今は内地で力をつける時。
そのために今後は今まで以上に要らない任務を沢山やらなければならなくなる。
そもそも調査兵団にあてがわれる公費は少ない。
それだけではとてもやっていけない。
だからこそ、他に支援してくれるスポンサーが必要になる。


「幸い、君や彼女はそちらの方々からは人気がある。」

「素直には喜べませんが。」


最内地で憲兵団に守られ平和に、贅沢に暮らす貴族を中心とした富裕層には調査報告が娯楽の一つとされていた。
彼等の調査報告は刺激的な物語。
物語の続きを聞きたいが為に、彼等は調査兵団に多額の支援金を出す。
そして物語には、美しい男女の恋愛エピソードは欠かせない。


「事実、君と彼女が報告会に出席するとしないとでは支援金の額が変わるではないか。」

「それはまぁ、そうかもしれませんが…。」


だから呉々も頼むよ、とキースは言った。
そして渡されたのは報告会の予定日と場所の記載された命令書だった。
翌日、新しい隊編成が発表された。
団長のキースの下に今までいくつもに分かれていた分隊が一時撤廃され、兵士長にエルヴィン、その下に訓練班、研究班、通常任務班の三つに分かれる事となり、各班に班長が任命されていた。
訓練班の班長ミケ、研究班の班長にはハンジがついた。
通常任務班にはソーマが任命された。
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