第1章 at THE STATION
私、伏見 恋歌は走っています。
八時十八分発の電車に乗るためです。
高校一年の春、初めての登校日に遅刻なんて嫌でしょう?
この電車を逃したら、遅刻してしまうんです。
もともと体力のない私は、走ることは大の苦手で、すぐに息が上がってしまいます。
それは今も例外ではありません。
どんどん上がっていく心拍数、
それに伴って荒くなる呼吸。
立っていることも難しくなってくるんです。
力尽きて駅の階段に座り込む私に手を差し伸べる人は、都会の駅にはなかなか現れませんでした。