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家事のお姉さんと歌のお兄さんと

第4章 挨拶回りと初仕事




「ごちそーさん」

「お粗末さまでした」


いやー美味かったなーと言いながらきちんと完食し、満足そうに目を細める大和さんを見ている限り、おそらく本当の事なのだろう。相手に警戒心を持っていても、やはり手料理を褒められるのは嬉しいものだ。
食べ終わった食器を洗っていると、遠目にうとうとしている大和さんが見える。オフの日は普段しない早起きをしたという事もあってかテーブルとこんにちは寸前。
洗い終わって手を拭きながらそっと声をかける。


「大和さん、ここで寝たら風邪ひきますよこれから掃除するので落ち着かないと思いますし、自室で寝て下さい」

「ん、わりぃ」


大和さんはもごもごと眠そうに呟くと自分の部屋へと戻って行った。

これから掃除。今が12時ちょっと過ぎだから、1時間半位で掃除して残った時間で買い物に行ってこよう。今晩の分の食材が足りなくなりそうだ。
朝はそれぞれパンとか簡単なもので済ませてもらって、私の出勤はその後からになる。家から通っているとなると、どうしても朝までは面倒見きれる勤務時間にはならないのだ。

10時~20時勤務で休憩は1時間半。前にいた会社はとてもブラックだった為、7~23時なんてアホみたいなシフトが当たり前だった。それから考えると時間があまり過ぎて辛いほど。そう思うと我ながらどれだけ仕事人間だったんだろうかと呆れてすらくる。
でもこれからは空いた時間で皆の事をたくさん知ろう。そう思いながら黙々と掃除を続けた。

ピカピカになった通路や事務所、レッスン室を見て達成感に一息つく。時間は13時30分きっかり。我ながら完璧だ。
夕食の献立を考えながら冷蔵庫の中も綺麗に掃除しておいたので、買い物メモもバッチリ。


「大和さーん……?」


出掛ける支度をしてから小声で呼ぶも、返事は無い。
勝手に居なくなっても不審がられそうだから声を掛けてみたけどやはり熟睡中のようだ。

テーブルに「夕飯の食材を買いに〇×スーパーまで行ってきます、帰宅予定は15時少し前です。瑠璃華 13時35分」と書き置きを残して、事前に万理さんからある場所を聞いていた買い物カバンと鍵を持って歩き出した。

私が今から行くスーパーよりも近い位置に百貨店もあるのだが、多少歩いてでも安い方がいいのでスーパーに決定。
14時のタイムセールに向けて私は歩みを進めるのだった。

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