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家事のお姉さんと歌のお兄さんと

第10章 歓迎パーティの波乱




「明日……ってか日付的には今日から俺のマネージャーか……いやー、いいねぇ専属って響き」

「でもごめんね、紡ちゃんみたいに可愛くないから横歩かせても特に誇らしい気持ちにもならないと思う」

「へ?お前さんそれ本気で言ってる?」


私って、電車に乗ったらもう本気で忍び的なスキルでも発揮出来るんじゃないかって位には普通の顔してると思うから紡ちゃんみたいにパッ見て可愛い!ってなる子に専属マネージャーになってもらったが、若い子は喜ぶと思うんだよねぇ。いや、大和くんは同い年だけども。


「御崎は多分……」

「あー、いいよいいよ、大丈夫昔からだから」

「話くらい聞いてくんね?」

「あはは、恋愛系とか見た目とか……あとは家の事とか?コンプレックスは色々あるんだ、謝るだけ謝りたかっただけだから軽く流して」


ふふ、と笑って二~三歩先へ行くとビルの群れを見上げる。

この手の話なんて考えてたら全部家のことに結局繋がるんだよね。
見た目についてはそこらのボンボンが〝企業の娘〟と結婚する為におだててきた挙句、それこそ家の事もあってこっぴどく振るなんて出来ないから優しく振ると「お前の見た目なんて興味ない、用があるのは金だ、家だ、消えろブス」と口を揃えて言う。
もうお世辞には慣れた。言われてもなんとも思わないし、裏があるのなんて見え見え。もう言われることすら面倒。


「御崎……あのさ」

「私の家もうすぐそこだから。じゃあ、明日から宜しくね、おやすみなさい、二階堂大和さん」

「っ……お……やすみ」


嫌な事をまとめて思い出したせいで、露骨に顔に出してしまっているかも。取り繕う笑顔を忘れずに私は大和くんに挨拶すると曲がり角を曲がった。

何か言いたげな顔をしていたけど、聞かないでいてくれる辺り気が楽だ。
多少酔いが残ってて油断してたな……ポロッと自分からトラウマ引っ張り出すとか精神的に病んでるようで反省点しか見当たらない。


(面倒なマネージャーだと思われないように、日が昇ってからはまた気持ちを切り替えていこう)


オンボロな外装の建物に入り、殺風景な自室に足を踏み入れてから、私は一つため息をついてスーツから寝巻きに着替えてベッドに横たわる。

明日のやる事をスケジュールで確認しつつ、私はまた微睡みへと吸い込まれていくのだった。

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