第1章 ふわり、ふわりと夢、うつつ
此処は先程お二人の為に用意した部屋に、三つお膳が揃っている。
いっぱんぴーぽーな私が戦国大名、それもこの二人と一緒に食事だなんて折角の懐石でも、ただのきんぎょの餌と化してしまう。
しかし、本当に食べないよ、この人。
別に食べようが食べまいがどうでも良いのだけれど、今は本当に大谷様を何とかして欲しい。大谷様は自分が嫌いな物をポイポイと私に寄越し、自分が好きな物はどれ、ワレが毒見をしてやろなんて言い、煮魚や何やら取られてしまう。
ホント、どうにかしろ下さい!
明朝、昨日が何事も無かったように彼らは己らの城へと帰途に就く。
「道中、お気を付けて下さいませ」
とやはり無難な言葉を選ぶ。若干棒読みなのは仕方の無い事。
それに対しても大谷様は笑い続けた。
コノヤロ。
辺りを見渡した私はある物が無いのに気付いた。
大谷様は見た通り要らないと思うが、石田様はどうするのだろうか。
「私は馬よりも速く走れる」
必要ない、と石田様が答えた。
って、まだ私何も言っていないし!
「ヒッヒッヒッ…三成が答えよった」
石田様が答えた事が余程面白かった大谷様は終始笑っていた。
あの引き笑い、疲れないのかな…。
「…して、傾国の花よ」
私は大谷様の不思議な瞳を覗く。
知りたければ、ワレらと共に…
これは、
罠…?