第1章 ふわり、ふわりと夢、うつつ
門番からお二人が到着したとの報告を受けると、他の女中が先に部屋へと案内し、私はお茶とお茶請けを用意してからお二人が待つ部屋へと向かった。
「失礼致します」
廊下で膝を折った私は無難な言葉を頭の中で整理しながら声をかける。
すると入れと関さ…げふっ…石田三成様の声がした。
引戸を開けて失礼のないように部屋へ入るとあのお二人が当然のように鎮座しているからまぁ、不思議。
バサラキャラ、これで六人目で御座います。
さて、最初の難関をクリアしなければ…。
「お初にお目にかかります毛利家が女中、名前と申します」
どうぞ、よしなに。
で良いのかな?
勿論、私に作法と言う物は備わっていない訳で、この言い回しも夢小説よろしく、トリップする前に読んでいた自己紹介そのまま丸パクリ。
何も言って来ないと言う事は大丈夫みたい…。
さて、第一関門は突破した。
あまり長く話しているといつボロが出るか解ったもんじゃない。
私は何かあれば申し付けてと当たり障りのないように言った。
そして彼等にお茶を差し出すと失礼致しました、と声を掛け逃げる様に部屋から出ようとしたんだ。
「ヒッ…。噂の傾国の花よ」
だけど、彼の独特な引き笑いと共におの渾名が紡がれ、つい足を止めてしまった。
「ヌシの噂は予予よ」
ふわりとあの輿で近付き品定めをする様に私を見やる。
もう、静かにしてよ、私の心臓!
彼はこんな身なりだけど、私のイケメンセンサーが感知して、私の心臓がそれを知らせている。
てか、イケメンセンサーってなんだよ。
ちらり、と石田様の様子をみると目を伏せて眉間に皺を寄せるも、その姿は見る者も全て魅了し、それは一種の彫刻を思わせる程に美しく鎮座していた。
「っ!」
ちょ、なに、この美人はっ!!
いや、アニメとかで良く見ていても美人だなとは思っていたけど、実物マジでヤバイって。
特に、その髪の毛がどう造られているのか実に興味深い訳よ。あぁ、触りたい…。どうなっているのか知りたい…!
この面子にプラスしてその様な事を考えていると何かを感じ取った彼があの独特な引き笑いで私の妄想に終止を掛けた。
「ヒッ…醜いワレよりも、美しい三成が良いとナ…」
大谷様、マジでフェアリー…げふ
「そんな事御座いません!」
大谷様は蝶の様に優雅で…
「え…?」
…私、今何を言った?
