第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
「姫さん、アンタに文だ」
俺は朝早くから己の鍛錬と、城の見回り等に精を出していた。
結局三成様はあれからどっか行ったっきり帰って来なかった。
丁度城を一周回った所で姫宛に文を受け取る。
上質な淡い紫の和紙。
それに刻まれた九枚笹と、焚かれた香の匂いで直ぐにあのお方と分かった。
文を彼女に渡しチラリと横目で見遣る。
彼女はそれを丁寧に開き文字を目でなぞると一つため息と共に目を伏せた。
「…何て書いてあったんだ?」
彼女は俺に視線を移し、その文を此方へと渡して来た。
「…そうか」
読み終えた俺は文を彼女に戻し、一つ溜息を零す。
はぁ…。
三成様も帰って来ないし、半兵衛様も執務やら何だで名前を迎えに来れないって言うし、それに主の居ない佐和山城に今誰かが攻め込んで来たらどうすんだ。
名前を護りながら何千もの敵兵が押し寄せてでもしてみろよ。
流石の俺でも死ぬぜ。
…でも、三成様が帰って来たら来たで大変なんだよな…。
何せ城の主、三成様殴っちまったんだもんな…。
貴様!今すぐ斬滅してやる!って言われながら…イヤ、三成様の言葉さえも聞けずに斬滅されるんだろうな…。
痛いの、イヤだなぁ…。