第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
【forty-third.】
「あぁ、半兵衛殿」
僕は一先ず秀吉の待つ大阪城へ戻ると、丁度に家康君が待ち構えていた。
「やぁ、家康君。久しぶりだね」
お互いに当たり障りのない挨拶を交わすと、家康君は如何にも聞いてくれと言わんばかりに瞳を輝かせ僕に話をふる。
どうやら三成君に匹敵する人材を迎えたと言う話だ。
「ほう、それは興味あるね」
是非、会って見たいものだ。
僕はそう言うと家康君はもう少しすると此方に着くと言う。
「あぁ、丁度来たみたいだ」
そう言った家康君の視線を目で追うと小さかった人影が徐々に形になり此方に向かって来た。
「お待たせして申し訳ございません」
ドクン…
「半兵衛殿、この者が先程話していた人物」
ドクン……
僕の心臓が誰かに抉られた様に脈打つ。
「祈織と申します。お会いできて光栄だ」
竹中半兵衛…重治、殿…。
総てが狂い始めた瞬間だった。
この瞬間に今まで築き上げて来た物が総て崩れ去っていった。
秀吉や彼女、それに三成君らと何事も無く、笑いあえる様な陽のある道を歩む筈だった。
僕の運命は変えられ無かったとしても、彼女が…君が笑ってくれるので在れば、僕はその運命を受け入れる筈だった。
だが、一度ねじ曲げられた運命は己の欲によりもう二度と真っ直ぐな道には戻れない。
陽のあたる道には、戻れない…。
そう…。
この瞬間から…。
ドクン…。
これから…
僕は君の笑顔を…。
ドクン………。
「…時間だ」
あぁ…済まない…。