第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
【forty-second.】
「いい加減にしろっ!」
俺の怒鳴り声と障子が蹴り破かれるのは同時だった。
そして名前様に覆い被さる三成様を無理やり剥がし、思い切り主を殴り飛ばす。
俺に殴られた三成様は大きな音を立て新たに障子を突き破り、そのまま廊下に投げ出された。
俺はそのまま動かない名前様に布団を掛け、三成様に向き直りこう言った。
「アンタ、一体何考えてるんだ!」
俺はこの時、自分がどうなろうと構わず三成様を殴った。
ただ、ただ、三成様が許せなかったんだ。
辺りが騒がしくなる。
それもその筈。辺りは皆寝静まった頃にこの様な大きな音がした訳で、しかも姫様の部屋で事が起きた物だから余計に集まって来る。
俺と三成様は互いに掛ける言葉もなく、三成様は口元から流れる血を手の甲で拭いフラフラと立ち上がり、何処かへ消え去ってしまった。
「名前…」
こんな時、半兵衛様ならどうするのだろう。
優しく抱きしめる?
それとも優しい言葉を囁く?
今更そんな事、俺に出来るのだろうか。
俺は、許されるのだろうか…。
刻は少しだけ遡る。