第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
「石田さん?」
光り輝く宝石の様な瞳と私の視線が重なり合う。
どうやら何度も私を呼んでいたみたいだが、私は全く気が付かなかった。
「あ…申し訳、御座いません…」
そう言い、名前様に向かって頭を下げると私の頬にほんのりと温もりが差し掛かる。
それと同時に、彼女のあの香りが私を包む。
「っ…!」
再び、彼女と視線が絡み合う。
彼女はゆっくりと私に微笑みかけ、こう言った。
「貴方は美しい銀色の月…」
何時も、泣きそうなお月様。
「今日みたいに、月の綺麗な日は外へ出て月を見ていたの」
私の頬に手を添えたまま、彼女は夜空に浮かぶ月を見る。
あぁ、知っている…。
私も、同じ月の下に居た。
「綺麗だけど、今の貴方みたいに寂しそうだった」
視線は再度私の方へ向いた。
今、この空間には私と彼女だけ。
恐ろしい位の静寂の中、私の頬に手を添えたまま見つめ合う。
時折吹く冷たい風が、彼女と私の髪を揺らす。
いつの間にか短く切りそろえられた彼女の美しい髪。
ふわりと靡き月明かりがより一層彼女の髪を輝かせた。
「何時も、月に語り掛けていたの」
彼女の表情が先程よりも困惑を表す。
私はどうする事も出来ず、ただ、彼女の語りを聴いていた。
『孤独なお月様』
" 孤独な月よ "
『そんな寂しい顔をしないで…』
" 何故その様に哀しむか… "
『美しいお月様』
" 美しい月よ "
『アナタは…』
" お前は… "
孤独な色に染まった月明かりが私達を照らす。
「あの…」
そう言い、私の頬から手を離し言葉を続けた。
「わたし、石田さんの事…」