第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
【thirty-sixth.】
「え…、重治さん暫くの間此処から居なくなるんですか?」
わたしは先日あの豊臣の姫になってしまった。重治さんと秀吉様…お父様の計らいにより何時も通りに過ごして良いと言われたのだけれど、その何時も通りが良く分からなくて取り敢えず鯉にエサをあたえる係に立候補したんだ。それに姫と言う役割も分かってないし、重治さんはどう言うつもりで私を姫にしたのか未だに謎。そして重治さんに誘われたまま縁側でお茶をしているとしばらくの間いなくなると彼が唐突に言う物だから少し驚いている。
「あぁ、少し安芸に行ってくるよ」
わたしはアキが何処だか分からずに首を傾げ適当な返事をすると、重治さんはクスって笑って教えてくれた。
「安芸は君の所で言う広島の事だよ」
あぁ。私って馬鹿過ぎ…。
素直に地名が分からないって言った方がよかった…。
「此処は秀吉が居るけど、忙くて君の相手まで回らないから」
わたしはじっと重治さんの話を聞く。
空いた時間が出来たらお父様とお茶をしている事は内緒にしておこう。
「僕が帰って来るまで三成くんの佐和山で過ごして貰うよ。あぁ、それと、秀吉には程々にと伝えておくから」
お父様、ごめんなさい。わたしは重治さんの笑顔には勝てないです…。