第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
わたしは月から視線を外すと良く知った姿を見付けた。
あ、重治さん見っけ。
彼を見付けた瞬間、胸が高鳴る。
その高鳴りは早く重治さんの所に行ってとわたしを急かす。
あぁ、何て分かり易いのかしら。
「重治さん、こんな所に、あ…」
えーと…石田、様?
だったっけ?
わたしが彼の名前を呼ぶと彼…石田様は少しだけ顔を歪めた。
名前、合っているよ、ね?
「…君は今日から秀吉の娘になったんだ」
様は要らないよ、と重治さんはわたしに向かって言う。
あ、そう言う事ね。
わたしは名前を間違えたと思っていたので少しだけほっとする。
秀吉様の娘、ね…。
わたしが秀吉様の養子になったのは本当についさっきの事。
そんな事を考えていると石田…さんに呼ばれる。
「名前、姫様…。」
あれ?何だろう。
彼に " 名前 " って呼ばれた時、何か変な感じがした。
前にも感じた物足りなさ。
うーん、分からない。
って、姫って何かこそばゆい。
「あぁ、やっぱりそうなるのね…」
実感沸かないし、慣れないよ…。と苦笑いをする。
だって、本当についさっきなんだもの。
改めて考えてみると、わたしはこの世界の人間じゃない。
わたしは此処に居て良いの?
わたしは重治さんの傍にいて良いの?
今にも泣きそうなお月様、
アナタの願いは何?
わたしの願いは…。