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【YOI・男主】愚者の贈り物

第5章 閑話休題・お露西亜中継。


全日本選手権とほぼ同日程で開催されているロシアナショナルに参戦していたユーリ・プリセツキーは、練習の合間を縫ってはしきりにスマホを確認していた。

「ユリオ。試合前なんだから、あまり勇利の事ばっか気にしてちゃダメだよ」
「ば、別に気になんかしてねえよ!俺がいない間、アイツが腑抜けた演技してねえか見張ってるだけだ!ヴィクトルだってヒトの事言えんのかよ!」
「だって、俺は勇利のコーチだし♪長谷津の勇利の家からストリーミングして貰って、あっちの様子はLIVEで確認できるんだよね~」

スマホを手に小憎らしいほどの笑顔で「見せないよ?」と言うヴィクトルに、ユーリは「いらねえよ」と返しながら、再び己のスマホに視線を戻す。
実は、ユーリも優子経由でヴィクトルと同じく日本の番組をスマホで閲覧出来るようになっていたので、ヴィクトルから少し離れた場所で全日本選手権男子SP滑走を観る。
勇利の他には、昨シーズンのジュニアGPFで戦った事のある青い瞳の日本人選手や、その他見覚えのある顔もチラホラと存在していた。
最終グループの1番滑走者として登場した勇利の演技が始まると、ユーリはイヤホンに切り替えてスマホを凝視する。
終盤の4Fを回避し完成度と安定感を重視した勇利の演技は、正に圧巻と呼ぶに相応しいもので、プログラムのタイトルに相応しすぎるほどの勇利の表情とフィニッシュポーズは、思わずユーリでも赤面しそうになる程であった。
(フン…やれば出来んじゃねえか、カツ丼)
もう少しで声が出そうになったのを寸での所で堪えると、ユーリは満足げに頷こうとしたが、
「もー、勇利はエロスにも程があるだろう♪完成度は悪くないけど、あんまり感情を出し過ぎるのは俺感心しないんだけどなあ。特に最後のポーズ、誰を抱いてるつもりだい?ねえねえ、誰、誰?」
(…ウゼェ)
スマホガン見で眉を下げ、口をハートの形にしながらニヤけている男に、ユーリは心中でげっそりと呟いた。

その後、ブランクなど感じさせない圧倒的な演技でSPトップに躍り出たロシアの皇帝が、インタビューその他を終えた後の控室で、スマホを握りしめたまま茹でたタラバガニより赤くなってへたり込んでいるのに遭遇したユーリは、試合後の苛々も手伝って更に「キメェ」と付け加えた。
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