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【黒執事】壊れた貴女を看取るまで

第10章 綺麗な白色


「ふふっ、可愛らしい反応ですこと…これくらいにしてしまえば煩わしい女の子も可愛くなれるものなのですね」

「な、に…これ…」

目の前がグラグラと揺れて焦点が合わない。後ろに体を倒してしまうが、金髪の吸血鬼が私の腰を押さえているので椅子からは落ちずに済んでいるようだ。
ようやく目の前がはっきりと見えてきてある程度の判断力も戻ってきた。

「あらご存知ないのですね。吸血鬼は血を吸うときに気持ちよくなれるように催淫毒を入れるのですわ。普通の人ならもうどうにかなっているくらいなのですけれど…アイリーン伯爵ならもっとひどいことをされてきている筈ですし、問題はありませんでしたか?」

その瞬間、カッと頭に血が上った。
私は床に落とした拳銃を拾ってマーガレットに撃つ。
弾丸はマーガレットの肩をかすめて白い修道服に赤い血が滲む。
その瞬間にマーガレットの身体中に赤い契約印が浮かび上がる。首筋に腹に腕に脇腹にいくつにも重なった契約印の影が白い修道服から透けて見える。

「なにその量の契約印…あなた頭おかしいんじゃない」

「なにもおかしくなんてないのですわ。みーんな、私だけのもの」

マーガレットは自分の斜め上を浮遊している吸血鬼の手を掴んで指を絡めるとそっと顎に指を滑らせた。

「ねえ、もっとちょうだい」

ー忘れてた!

ジェーンが私の肩を後ろから回り込んで抱きかかえ、もう一度牙を突き立てようとする。

「触るな」

背後で血飛沫が上がる。数滴の血液が私の首筋に落ちる。ぬめりとした感触が気持ち悪い。
しかし、後ろから誰かに抱きしめられるこの感覚は嫌いじゃなかった。
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