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【黒執事】壊れた貴女を看取るまで

第9章 牙


「牧師様、シスターマーガレットがお呼びです」

すると、奥に通じる扉が外側に向かって開いてセバスチャンが講堂に入ってくる。

「分かりました」

その瞬間にジルが体を離し、私に背を向けてセバスチャンと入れ違って奥へと戻っていった。
重たい沈黙が講堂を包むと私よりも先にセバスチャンが口を開けた。

「いま、なにをなさっていたんですか?」

さっきの沈黙のほうが数倍マシだった。口を開けたかと思えば声音は怒っていた。
表情もいつもと変わらないようだが、冷たい。

「見てたの?さっきの…」

「ええ」

セバスチャンがゆっくりと一歩ずつ私に向かって進んでくる。
私は後ろに後ずさろうとしたが、何かの力が働いているのか後ろに下がれなくて全く動けない。
とうとうセバスチャンが私の一歩前までくると私を正面から抱きしめてきた。

「えっ、セバっ…」

今までにも抱きしめられたことはあったが、それでもいつもからかわれて抱きしめれるか、私が体調が悪くそれで支えてくれる、くらいのレベルだ。背中に手を回して自分の方へと自分の方へと引き寄せて、私の首筋に顔を埋める。
状況が把握しきれない私は腕をだらりと下に垂らして、セバスチャンされるがままにされている。
私から体を離したかと思えば唇を塞がれてぬるりと舌も入ってきた。

ーキリストの肖像画の前でこんな…!

ここは教会だ。どこにいても神に見られているような気がしてならない。
今のこのキスも背徳感と罪悪感が複雑に心中で絡み合う。
唇が離れると私は腰に力が入らなくなって力なく床に座り込んだ。

「なによ急に…」

口の端から唾液が垂れるのを感じると修道服のすそで拭いた。

「自分の大事なものが誰かに勝手に触られていたら怒りたくもなります。しかし、執事としての身勝手をお許しください」

ー私が、大事なもの?
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