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毒舌な保健医。

第3章 罪悪感


こく…と頷いた私に
先生は溜息を吐いていた。


教室に戻れって言われたけど
場所わかんないって言えば、
呆れた顔して案内してくれた。


新しい絆創膏はちゃんと
貼り直してくれて剥がれない。


もしかしたら痒みがあって
無意識に掻いていたのかも…
ちゃんと手当てしなかった
兄が忘れないように…と。


そう考えると兄はどこまでも
私の心のどこかに存在してる。


でも先生といる時は
先生だけを考えられる…


教師となんて思ってたけど
兄と交わった私にもう何も
迷うことは無いのだから…、


『先生…っ』


『あっ?』


前を歩く先生に声をかけて
心の中で呟いた。


" ごめんなさい。 "


貴方を巻き込んでしまった
私の我儘は許されない。


『へへ…何でもないっ』


笑って誤魔化せば先生は
振り向かずに答えてくれた。


『何かあったら言え、』


ただ、シンプルに強制を
する訳でもなく平然と…。


あぁ…どこまでも優しい…


私の事をわかってくれるのでは
…そんな期待が胸をざわめく。


『だぁっ、案内クソめんどい。』


『ほら、私の方向音痴だからっ』


『さっさと覚えろ、
俺の仕事が増えんだろーが。』


何だかんだ言ってちゃんと
案内してくれるのだと思う。


迷ったら手を引いてくれるし
聞いたら答えてくれるだろう。


助けて…と呼べば…来てくれる?


『今日ね、兄さん…遅いの。
昨日と同じくらい…だって…』


『…ん、りょーかい。』


教室に近づくにつれて
登校する人達が増えてきて
先生に挨拶する光景。


皆は知らない私と先生の関係


知られてはいけない秘密の関係。


私にとってきっと最後の我儘
もうこれ以上にないご褒美…。


罰が待ち受けようとも
私は先生を求めてしまうだろう。


『教室、あれ。』


指さされて着いちゃったって
思いながら先生の横を通る。


『逃げんなよ。』


そう呟かれた気がして
スカートを握りこく…と頷いた。


フッ…と微笑んだ先生に
顔が赤くなるのを感じて
振り向き歩き出す先生を見送る。





ありがとう…そして、ごめんなさい。




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