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さにわのはなし【刀剣乱舞】

第10章 「愛とはどんなものかしら」


そうして審神者になって、
家族とは表向き仲良しゴッコを続け、
本丸運営に苦心しつつ戦っていたら、

いつの間にか最古参のひとりになっていた。

一緒に審神者になった同期は、
だいたい脱落していたそうだ。

男士への愛情故に、精神を壊したとか、
男士に愛されすぎて、本丸が瓦解したとか。
おおむねそんな理由が多かったらしい。

なんだか笑えてしまった。

生命を預ける連帯感。異種族間の協力関係。
歴史を変えられたら双方まずいから、
成り行きで手を組むことにした、
いつか別れる仮初の主従。

そんな、
惚れた腫れたなんぞ微塵もない本丸が、
愛情ある審神者の本丸よりも長続きした、
いや、現在進行形で、しているなんて。

「愛がなければ人間失格」みたいな風潮は、
一体、何であったのか。


無力でなければ好かれないなら、
そんなの一生好かれなくていい。

愛を押し付けて誰かを殺すなら、
誰も愛せない方がいい。

呪われたって構わない。
恨み、妬み、嫉み。
それは「私の願いが叶った証拠」だ。

自分の力で何か成し遂げて、欲しいものを得て、
つまらない嫉妬を買いまくるだろうが無視して、
「あー楽しかった」と笑って死にたい。

そっちの方が、きっと、絶対に楽しい。



だから、今では本当に思い出せないのだ。
愛されることの何が、
そんなに楽しかったのか。

心身を壊してまで、
相手の気分に左右される御褒美を、
「いつかくれるだろう」と
都合よく妄想して。

自由に動けて、
考えられる人間なのに。
自分からすすんで道具になろうとしていたのは、
どうしてだったのか。
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