第5章 5
正直、二人で面談とかしたくないんですが。
戦場において精神がおかしくなるのは、「ここでは生きていけないから別の場所に移動しろ」という体のサインだ。
それが無い人間もいるにはいるのだが、そういった面々は、戦場での異常な刺激を「異常ではない」と受け止められている。
例えば、この審神者のように。
「おかしいこと」をおかしいと思わない人間は、つまりそいつ自体がおかしいわけで。
この資料は端的に言えば、これから面談する相手が「どこかが相当狂っている」ということを教えてくれたわけだ。
極めつけが、本日病欠をキメた、あのモラハラ糞上司の萎縮ぶりである。
件の審神者、どうやら政府高官の一人娘らしい。
絶対に怒らせるな、機嫌を取れという文面の連絡が、何度も端末に入っていた。
頭おかしくて金持ちの、しかも大切にされてるであろう一人娘。
これ、失敗したら私の首飛ぶでしょ…。