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君と私と(非)日常

第28章 爺共からの床急ぎ


「……本当に何もしなくてよかったの?」
「は? 何が?」
2人の女子高生がシェルターと化した旧校舎の廊下を歩く。周りには誰の気配もない。
「ほら、あのお腹……記憶なくなったら違和感持っちゃうんじゃないかな」
おずおずと戦場むくろが江ノ島盾子に尋ねる。
クラスメイトの希灯誉稀がどこからかこさえてきたボテ腹について言及した。
平均よりも控えめであまり目立ってはいないが、平常の腹周りと比べたら明らかに違う体つきになっている。本人であれば突然の体の変化を疑問に思うだろう。
盾子ちゃんなら希灯の胎内に何か処置をするだろうと思っていたのに未だ何の対策案も伝えられず、何らかを企んでいる気配もなかった。
「あーアレね。先輩とズッコンバッコンしたっていうあの腹ね」
半歩後ろをついてくる戦場を一瞥もせず、どうでもよさそうに毛先を指でくるくるしながら江ノ島が返す。
「別にほっといてもいいのではないでしょうか。希灯は愛する人と子を成してとても幸せそうでしたし」
「えっ、何で……? いつもの盾子ちゃんなら、絶望って……」
「はーッ! ほんっと残姉ちゃんって残念だよね~。残姉ちゃんすぎて幸先が絶望的なんですけどぉ?」
江ノ島の一言一句にビクビクしながら戦場が肩を縮こまらせる。
「あ、ぅ……ごっごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい」
「よいか? これからあの頭お花畑たちはわたくし様の手によって記憶を入学の日に戻されるのじゃ。当然希灯も! それで起きた後、体の違和感に気付くもセンシティブな問題を誰にも打ち明けることができず、誰のとも分からない胎児を抱えて日々を過ごす絶望! ワンチャン病んでコロシアイ学園生活に彩りを与えてくれるかもしれぬ。これは利用するっきゃないではないではないではないか」
腕組み仁王立ちしながら江ノ島は不敵に笑みを浮かべた。……と思いきや、今度は不機嫌そうに眉間に皺を寄せ怒ったように肩を竦める。
「ていうか! 元々が凡人だったんだから遺伝子に後付けの才能が組み込まれるわけなくない? 根本的に計画が破綻してたんだっつの。ただの爺共が未成年に子作りセックスさせたかっただけって思われてもおかしくねーくらいガバガバの発想よねぇ?!」
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