第4章 甘いキスを教えてあげる ※【大将優】
兄貴の店 "ミャゴラーレ" で働き始めて3年。
梨央さんと出会った夏からも、3年が経つ。
あれから梨央さんと黒尾は結婚して…
うちの兄貴も結婚して…
今日もまた、友達の一人が結婚した。
式からの帰り、一人家路を歩く。
結婚ってものに焦りはないけれど。
皆どうやってたった一人の人を見つけるのだろう、とは思う。
この3年、俺にも彼女がいた時期はあった。
それなりに仲良くやっていたとも思う。
でも、世の中上手くいく恋愛ばかりではない。
1年程前「他に好きな人ができた」と言われ、その彼女とは終わりを告げた。
俗に言う "運命の人" ってのは、俺にもいるんだろうか?
いるとしたら、いつ、どこで出会えるのだろう?
それはどんな人で、どんな姿かたちをしているのだろう?
その人は、俺だけを愛してくれるだろうか…?
たぶん、今日という日が少し非日常だったから。
こんなことを考えるのは、きっとそのせいだ。
この時の俺は、これから初めて出会う人こそが
"運命の人" だと思い込んでいた。
既に出会っている女の子の中に、その "運命の人" がいることも知らずに……。