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死神に教わる甘え方。【R-18】

第5章 12月17日【あと7日】


「ねえ、君は谷崎はるとって人、知ってる?」

突然変わった口調に驚きつつも、聞かれた質問に答える。

「……知らない。聞いたこともない」

彼は肩をびくりと跳ねさせてから、こちらを振り向く。

「じゃあ、この顔に見覚えは?」

彼の手が、今まで私の前で取られることのなかった仮面をゆっくりと顔から外す。私の心臓はなぜか爆発しちゃうんじゃないか、というくらい鳴っている。まさか、彼の顔を見られる時が来るだなんて。

「っ……」

彼の顔は私が想像するよりずっと若くて、可愛らしい顔立ちだった。

「……知ら────」

『いつも朝早くて大変ですね』

「え?」

知らない、と言おうとした瞬間に声が聞こえた。いや、声が聞こえた気がした。だって、ここには彼と私しかいないのだから。

死神と出会ってから初めて顔を見たというのに、前から彼の顔を知っているはずなんてない。ない、のに……。どうして、こんなにも……。

「……分から、ない……。分からない」

知らないはずだ。
でも、分からない。
知らないのに、知らないと断言できない。分からない。分からない分からない分からない分からない。

「分からない?どうして分からないの?」

どうして分からない?

こっちが聞きたい。
どうして私はわからないことだらけなのか。

「分からない。何も分からない。あなたのことも、私のことも何も!知りたいのに、分からない。誰も教えてくれない。ねえ、あなたは一体何者なの?ニーナって誰?どうしてこんなに変わってしまったの?何があなたを変えたの?ねえ!」

ああ、苦しい。
苦しいし、痛い。

「私のこの気持ちは、一体何なの?」
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