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【HQ】1年シンデレラ

第18章 3回目


少しだけ、相手に近付くように一歩踏み出す。

「本日は、宜しくお願いします。」

頭を下げてないだとか、変ないちゃもんをつけられたくないから、深くお辞儀した。

「そんなに頭下げないでよ。私が怖い人みたいじゃない。…こちらこそ、今日は宜しくね。」

予想とは真逆の愛想の良い声での返答。
目の前に差し出される手。

握手していいのか分からずに、ただ手を眺めるだけにしていると、強引に手を握られた。
痛みを感じるくらい力が強くて、女の顔を見る。
笑っているのに、私を見る目は鋭く感じた。

縁下さんが居るから、愛想良く振る舞っているだけなのだと分かる。

「あの、マネージャーさん?女同士で話したい事があるの。少しだけ、席を外して貰えない?」

とても、有り難くない言葉が耳に入った。

縁下さんに一緒に居て欲しい、と視線で訴えようと振り返ると笑顔が目に入る。

「すみませんが、大熊は他にも挨拶に回らなければならないので…。雑談でしたら、別の機会にお願いします。」

そう、顔は笑っているのだ。
声は驚く程に冷たくて、有無を言わさない感じはしているけど。

その威圧に気付いたみたいで、女から手が離される。

「じゃあ、別の機会にお話しましょ。…シンデレラちゃん。」

女の方も、最後まで縁下さんには愛想良くしていた。

「すみません。お邪魔しました。」
「いえいえ、また後でね。」

こっちも、それに倣って愛想良く返す。
後で、が意味深に聞こえたけど理由はすぐに分かった。

部屋から出る時に、私にだけ聞こえるような声で、日付とある場所の名前を言われたから。

それは、及川徹と岩泉さんと食事をした日付と、日本料理屋の名前だった。
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