第12章 なぁ、たまには慰めろよ…
自宅だと祖父の目があるかもしれない
迷ったあげく繁華街の入り口で降ろしてもらった
「…お客さん…たまたまスリッパ使ってないのがあるから使うかい?」
「えっ‥あ、ありがとうございます!」
簡易スリッパをいただいた
なんで運転手さんスリッパ持ってるのかはこの際ありがたいから気にしない
「…気を付けてな」
そう言い残しタクシーは去った
ここから“X”のマンションまでは繁華街を抜け、細い道を少し歩く
繁華街を歩いていても“X”が周りにいないせいかいつもの嫌な視線を感じない
寧ろスリッパに気付かれ憐れみを含んだ表情を向けられる
「ねぇ、さっき“王”さまがいたんだって」
「え、嘘!いーなー私も見たかった!」
「すごい血相で走って行ったらしいぜ…」
「まじで?あの“王さま”走んのか」
「優さん見ちゃった!超絶イケメン!でもね女の子をお姫さま抱っこしてたんだ~ショック!」
「うわ、それはつら…その女誰だよ?」
今日も繁華街では相変わらず“X”の噂で溢れている
「ねぇ、あいりさんでしょ?」
突然、名前を言われ振り返る
白髪の男が立っていた
細身で身長は仁より少し小さめ
中性的な顔立ちで女性にも男性にも見れる
胸部が平らなことからして男性だろうか
優以上に目の奥が冷たい
何を考えてるのか分からない薄気味悪い
はっきり言って関わりたくない分類の人間
「えっと…どちら様ですか?」
「俺?俺はネコ、君の味方だよ?」
いきなり味方と言われてもなんのこっちゃ‥
「ネコ‥さん?…ですか…」
子供っぽい無邪気な笑顔…寒気がする
「君に警告をしに来たよ。これ以上進まない方がいい。きっと君はショックを受けるから」
「でもここを通らないと着かないから‥」
「僕は行くなとは言ってない。行かない方がいいって言っただけ。」
「そうですか…ありがとうございます」
彼を無視して繁華街を進む
「やっぱり行っちゃったか…僕はちゃんと忠告したよ?“あいり”…」