第3章 出会い2
...リン。
(ん?)
人の気配すら感じないこの林にはあまりに似つかわしくない鈴の音。
それに加えて、誰かの足音。
(...誰か、来る。)
音のする方を振り返る。
それと同時に、
「...どうなさった?そこの御方。」
顔に大きな傷がある袈裟姿の男性に声をかけられた。
『袈裟』。思い出すのは勿論、燃えさかる室内で眠っていた男性を、斬ろうとしていた誰かの姿。
(この人、まさか...。)
背中に嫌な汗がつたう。
「何かお困りのようなら力を貸そう。」
そう言って更に距離を縮めてくる男性。
それに警戒しながら、
「...いえ、お気遣いありがとうございます。ですが、私は大丈夫ですので。」
にっこり微笑みそう返した。
しばしの間、お互いに何も発しない状況が続く。
先にそれを破ったのは男性の方だった。
「...そうか、ならば良い。...夜の森は、たとえ『男』だとしても危険だ。すぐ立ち去った方がいい。」
「...ええ。そうさせていただきます。...では。」
この際『男』だと言われたことは無視する。
さっと頭を下げた後、男性が来た方とは反対方向に歩き出した。
その間、男性が動く気配はなかった。