第27章 〜27〜
少し泣きそうになりながら俯いている私に家康は言葉を続けた。
「本当は好きな男いるんでしょ?」
「……なんで……」
なんで分かったのか……驚いて顔を上げると、また「悲しそうに笑ってたから」と言われた。
(好きな人のこと考えて悲しそうなんて……)
家康に好きな人は誰と聞かれても、伝える気はなかった。
家康と彼は立場が近すぎる。
私の気持ちくらいで2人の仲が崩れるなんて思わないけど、何となく名前は言いたくなかった。
それに、本当に心から好きだと自分が自覚出来てないのに、私のことを好きだと言ってくれる家康に対して失礼な気がして言えなかった。
好きよりは憧れ……
それよりも感謝の気持ちが強い。
そして、その気持ちが恋だとしても、私は伝える気は無い。
今の自分の気持ちを正直に伝えると、家康は微笑みながら私の頬にそっと手を添えた。
私が驚いて家康の顔を見つめると、家康は私の目を真っ直ぐ見つめて言った。
「絶対惚れさせる。」
(惚れさせる……って……)
「……俺は優鞠が欲しい」
(……そんなこと……真剣に言われたの初めて……)
率直に気持ちを伝えてくれる事が嬉しくて。
そして恥ずかしくて、顔を赤くしてどう言葉を返そうかと思っていると、「覚悟しておいてね」という言葉と同時に額に柔らかい感触があって、驚いて見上げると、すぐに口付けされたのだとわかった。
「……!」
その後も嬉しくなるような、私をちゃんと大事に思ってくれてるんだなという言葉が沢山ふりかかってきた。