第5章 〜5〜
「信長様、お怪我は……」
「大丈夫だ。問題無い。」
信長が本能寺に宿泊し、夜も更けた頃のいきなりの火事。
家臣達も原因の追求を急いでいた。
「未だに発火元はわかってはいません。見張りの者達も特に怪しい人物なども見ておらず、気がついたら寺が燃えていたというばかりで……」
「そうか……。死者は出たか。」
「いえ、軽い火傷を負った者は数名居ますが死者は居りません。」
「ならよい。秀吉、原因についてわかり次第伝えよ。」
「は。」
「あの女はどうした。」
「女は……寺から出て来てすぐ気を失ったようで、政宗が救護班へ連れていきました。」
「女の目が覚めたらすぐに連れてこい。聞きたいことがある。」
「承知しました。」
秀吉はこの火事の中、寺の最上階に居る信長が取り残されていると聞いた時には心臓が止まる思いだったのだ。
火の不始末からの火事なのか、誰かの意思で起きた事件なのか、憶測でしか分からないがひとまず主の無事を確認して胸をなでおろした。
そして気になるのは、信長を肩に背負いながら燃え盛る寺から出てきた女のことだ。
最初は女中の誰かかと思ったが、見たことのない顔、そして見たことのない服装を身に纏う不思議な女だった。
火事の中逃げてきて、崩れるように気を失ったこともあり、信長様を助けた恩人として放ってはおけず救護班に治療させようと政宗が連れていったが、ふと気になり後を追いかけようと政宗が向かった方を見た。
(ん?気がついたのか……?)
女を横抱きにして歩いていったはずの政宗がその女と対峙しているのが見えた。
「……信長様、女が目覚めたようです。今連れてきます。」
「あぁ」
そう言うと秀吉は、何やらもめているような2人のところへ小走りで駆け寄った。