第1章 転
息も切れ切れに女将さんの元に辿り着く。
30秒以内で着けた自信はあるけれど…とても不安で恐る恐る女将さんの顔を見る。
意外、とても穏やかだった。
女将さん
「みわ、こちら真選組の近藤さんだよ。挨拶なさいな。」
女将さんは私を軽く後ろから押し、
近藤さんという方の前へ押し出す。
みわ
「……///」
近藤
「おう!!君が働き者のみわちゃんか!!
君に早く逢いたくて1日早く迎えにきてしまった!
年頃の女子だし支度がいろいろあるだろうが、
俺と直ぐにでも来てもらいたい!!」
優しそうな笑顔を浮かべた近藤と名乗る男性をよくよく見ると、
あまり良い噂を聞かない真選組の隊服を着ていた。
みわ
「…;」
私、何かしたかな?
考えてもみたけれど多分悪い事なんてしてない。
なんだか頭がクラクラしてきた。
真選組に捕まると酷い折檻を受けるって誰かが言ってたっけ…
例え女、子供だとしても…
女将さん
「あー!そう言えば、みわにはまだ話してなかった!
私ったらやーねえ〜
すまないね近藤さん、ちょいと待っててもらっても?」
近藤
「なんだ、まだ話してなかったのか!
それなら今日とは無理に言えんよ。
女将さん、また出直して来るさ!」
女将さん
「そ、そんな!!
だめだよ!駄目なんだよ!!せっかくの大金が!!!」
“バフッ”
近藤さんが帰ると分かった瞬間
半狂乱になった女将さんは、
席を立とうとする近藤さんの懐に乱暴に私を押しつけた。
近藤
「!!!」
近藤さんは、
そんな私を優しく受け止め
女将さんの方に居直ると強く確かな口調で話しだした。
近藤
「女将さん!アンタもしや…お祝い金欲しさで!?
みわちゃんが自ら隊舎の女中に志願したってのは…嘘だったのか!」
太くて通る近藤さんの驚いた声に、
店内の客だけではなく表を歩く通行人らの視線も
私や女将さん…そして近藤さんに向けられた。
近藤さんのしっかりとした腕は懐に納めた私を
ギュッと掴んで離さない。