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華の剣士 王宮篇

第21章 城を離れて向かうのは


「しかし、随分とお前も出世したなぁ。俺なんかお前の遥か下だぞ。」


穏やかな昼の日差しの中、共に見張りをしている先輩の隊員がそうぼやいた。何が、と聞かずとも、もちろん階級のことである。


ハヨンはなんと答えれば良いのかわからず、困った。すみませんと言えば、嫌みっぽいし、そうでしょうと言えば馬鹿にしているようだ。


「…そうですね。私も驚いています。」


やっと無難な答えを捻り出すと、それで間違っていなかったようだ。彼は怒りはしなかった。


「俺達お前が来たときははっきり言って馬鹿にしていたんだ。女が兵士なんて聞いてあきれる。どうせ縁故かその名前を振りかざして来たんだろって。」


「まぁ、そう思われても仕方ないですよね。」


チュ家は名だたる武人の名家だったし、合格する者がただえさえ少ないこの白虎に、男よりも力の劣るはずの女がしれっと入隊するのだ。普通は何事かと思うだろう。


「でもそうやってお前がだんだん人に認められていくのを見て、俺は間違ってたんだなぁと思う。視野が狭かったんだなってな。すまんな、たまにお前に嫌な態度であたったこともあったかもしれん。俺は未熟者だな。」


そう謝ってきたが、実際ハヨンに直接嫌がらせをした者は別の人物だ。そういう者はまず、謝ってこない。自分がしていることに自覚が無いだろうし、あったとしても相手に謝るようなみっともないことを自分が許せないのだ。



「誰だって嫌だと思う人ぐらいいますよ。それに先輩は全然未熟者じゃあありません。でも、私のことを気にかけてくださってありがとうございます。」


ハヨンはそう言いながら、自分だって宰相のイルウォンが苦手で妙な態度をとってしまうことに恥ずかしく思えてきた。


(この人のように嫌な思いを持っている人と話せる方法はないかな…。)


今朝のことを考えながらハヨンはイルウォンへの歩み寄りについて頭を悩ませるのだった。


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