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華の剣士 王宮篇

第21章 城を離れて向かうのは


「おや、おはようございます。」


ハヨンは午前中は城の警備の当番だったので、一通りの説明を受けた後、執務室から出るとばったりイルウォンに出くわした。


「おはようございます。宰相様。」


どうしてだか彼が苦手なハヨンはできるだけ会話を少なく立ち去ろうと思い、頭を下げ、歩きだそうとした。しかし、彼のあ、少しお待ちを。という声で足を止める。



「どうかなさいましたか?」


「リョンヤン様のことなのですが…。最近どうも今まで以上に根をつめて公務をなさっているのですが、どこか心当たりはございませんか?もしお体にさわったらと気が気でないのです。」


ハヨンには十分心当たりがあった。きっと反逆者が誰かを洗い出そうとしているのだ。しかしこんな大事な情報を宰相と言えど漏らしても大丈夫かわからなかったし、こんな誰でも聞けるような廊下で話すべきことではない。


「…きっとヨンホ様が来られてから、私も頑張らなければなりませんねとおっしゃっていたので、ヨンホ様によってさらに仕事への意欲が勝っておいでなのでしょう。」


とできるだけ平静を装い、イルウォンの目を見て話した。


「そうですか…。お加減にさわらなければよいのですが…。」



「では、私はこれで。」


ハヨンは一礼して、できるだけ足を速めないようにして歩く。


(なぜだろう、宰相様から早く離れたいと思って思わず走り出してしまいそうだ。)


ハヨンは廊下の角を曲がりようやくほっとした。ここはちょうど日当たりが良い場所のようで、朝日の柔らかな光が射し込んでいた。



(理由もわからずやたらと宰相様に怯えてしまうのはやめたいな。)


なぜだろうか、ハヨンにはいつも彼に血が通ってると思えないのだ。喋る人形と会話しているような、そんな奇妙な恐怖に陥ってしまう。


ハヨンはそんなふうに人を見てしまう自分が何となく嫌だった。


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