第2章 始まりの物語
しんしんと雪が降る静かな深夜。
月の光だけを頼りに歩めば、真っ白な道に小さな足跡が付いていた。
大きな屋敷だな、確か裏口はこっちか…
屋敷に忍び込んだ私は料理室にある通気口から天井裏へと音なく移動した。
頭の中に叩き込んできた屋敷内部の地図を思い出しながら、私は目的の部屋へと向かう。
部屋を見つけると私はまた天井の通気口から部屋内の様子を伺った。
屋敷の主で間違いなさそうだ…
ふぅ、と一息ついた私は天井の穴から
ベッドで寝ている男の脳天を銃で狙う。
落ち着け私…大丈夫だから。
煩いほど鳴っている私の心臓の音をBGMに私は人差し指に力を入れ、引き金をーー
引こうとした。
「ーむぐっ…んぅぅっ!!…ん~んっ!」
が、いきなり後ろから口元を布で抑えられた。
必死に息を止めて抵抗するが、次第に苦しくなっていく。
視界がくるりと周り、床に倒れた私が意識をなくす前に見たのはにこやかに微笑んでいる男だった。