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俺らのマネは地味子さん。

第14章 ELEVEN







明るくなった、会場。
男の声のアナウンスが流れる中、私は立ち上がれなかった。


「お客様、済みませんが」

「あっ、すみません」


スタッフに声を掛けられ慌てて席を立つ。

まだ、ロビーは混んでいた。
騒めきから逃れる様に私は、慌ててトイレの個室へ飛び込んだ。

現実を受け止めきれない。

だって、あそこまでするとは思わなかった。
想定外だ。
あんな破天荒野郎どもとは・・

これから待ち受ける現実を彼らは、ちゃんとわかっているの?




「地味子見かけた?」

ビクッと肩が揺れる。
気付かれるわけがないのにそれでも動悸が治まらない。


「見てない、本当にいるのかな?」

「てか、さっきの話どう思う?」


耳を塞ぎたい。
今すぐここを立ち去りたい。
まだ、エイターの声を直接聞く覚悟が出来てない。


「えーっ、マジ地味」

「確かに!
すばちゃんの冗談かと思ったらマジ、地味子だったね」

「てか、女マネージャーどう思う?」

「無し無し!」


早くここから逃げたくて私は慌てて個室から飛び出した。
用もないけど急いで手を洗う。


「でも、メンバー見てたら有かな」

「嘘!私も!!」


えっ?

思わず鏡越しにエイターを見つめる。

今、何て言った?


「あのメンバーの表情見てたら許せる」

「私らは許せへん」


会話に割り込む別の女の子、2組。
ヤバイ、そう直感した。


「何?」

「だって、地味子でも女やん。
女が担当のそばにおるの耐えれへん」

「私もや、自分耐えれるん?」

「・・・そりゃ、嫌だよ。
でも、地味子は違うと思う」

「自分ら地味子の知り合いかなんかなん?」

「違う!
全く知らないよ、知らなかった。
追っかけしてても地味子の存在に気付かなかった。
貴女達もそうじゃない?」

「メンバー達が言ってた通り、地味子は他の女と違う。
私なら自慢したいもん・・
もし、最悪誰かと付き合ってそれが担当だとしても地味子なら許せる可能性はある。
だって、地味子は・・」

「もうええ。
自分らの考えはわかるけどウチはまだ受け入れきれん」



そう言って立ち去って行くエイター達を私は呆然と見送った。

嘘・・
だって、そう思ってくれる人なんて1人もいないと思ってたのだ。







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